人は見たいものを見る
ローマのカエサルの言葉だったと思いますが、人は物事を判断する時に自分に都合の良い側面だけ見る、という意味合いだったと思います。
(もしかしたら、違うかもしれませんが、今回はこの解釈でこの言葉を使わせて頂きます)
物事が「こうなって欲しい!」「こうあるべきだ!」という想いたいがばかりに都合の良い情報ばかり集めるというは非常に危険な側面があります。
そして、この2~3ヵ月この言葉の重みを感じています。
先日、とある業界のお偉いさんと話していた時に、その方は「他国に比べて日本で新型コロナの死者数が少ないのは日本人がキレイ好きだからだよ!日本人の清潔感がコロナを抑制している!」と豪語されていました。
勿論そういう側面もあると思いますし、その時の話の本題は別にあったので、あえて議論はしませんでした。
しかし、その際に脳裏に浮かび上がってきたのは「人は見たいものを見る」という言葉です。
「日本は素晴らしい」「日本の自虐的な歴史観は間違っている」という自身の想いを支えるがために、
都合の良い情報だけ集めて「ほら!日本では死者数が少ないでしょ?日本人が優れているからだよ!」と言いたいだけだと思います。
しかし、新型コロナの国別の死者数を見てみてください。
現時点で日本は1,000人前後ですが、韓国は300人超、台湾は7人、ベトナムは2人、タイは58人、マレーシアは125人です。
勿論、人口比で見る必要があったり、データの正確性や検査数を見る必要はありますが、
それを加味してもアジア全体で死者数は少ないのです。
日本と同等かそれより「キレイ好き」だからでしょうか?
勿論、清潔かどうかも感染拡大防止の要因と思いますが、これだけの数値を見ればその要因の影響は小さく、
それよりも山中教授の言うような「ファクターX」的な要素の方が事実に近いのではないでしょうか。
というように、今回の新型コロナで「人は見たいものを見る」ケースを沢山見てきました。
「危険だ!」と思いたい・言いたいがためにその情報だけを流すマスコミ、
「日本が優れている」と言いたいがためにその情報をだけを集める、これでは思考停止で何も解決しません。
経営判断の誤り
そしてこれは経営でも言えます。先日もTVでNHK会長が「一番優れたテレビ番組」と言ったり、
「いきなりステーキ」の社長が「不振なのは顧客が商品の良さを理解していなからだ」という思い込みを基に対策を打ったり、
という事があります。顧客目線ではなく自分目線で話している場合は判断を誤る傾向があります。私自身もそうでした。
「自社の商品は素晴らしい」「絶対に儲かる」と願望が先行して、自分に都合の良い情報だけ集めて経営判断をするのは危険です。これは単なる「思い込み」です。それがたまたま当たれば良いのですが、それは稀なケースです。
多面的な情報収集と論理的思考力
ではこういった思い込みを避けるために何をしなければいけないかというと、事実に基づいた論理的思考です。
まず物事を判断するためには情報収集が必用です。その際は、自分に都合の良い情報だけではなく、聞きたくない情報も全て集めます。
私は、ニュースや著名人が語るだけのTVは、情報が一方的なのであまり見ません。それよりも、ツイッターで情報収集します。
ツイッターでは、著名人が発信した内容とそれに対するアンチコメントの両方が見れます。
両方を見て物事を判断するのです。TVでも見るならば討論番組です。反対意見も聞けるからです。
そのため、経営においても聞きたくない意見を集めて判断します。
また、判断する際には論理的思考力も重要です。これは集めた情報を整理・構造化して、
そこから考えられる結論にツッコミどころがないか確認するという使い方です。
論理的思考力というのは、情報収集(インプット)と結論(アウトプット)に大きなツッコミどころがなく、
自分自身と他者が納得できる決断ができる方法です。
私の周囲にいらっしゃる、業績堅調で何代も続いている経営者に方には論理的思考力に優れている方が非常に多いです。
論理的に物事を判断し、その結果も検証し、的確に改善をする力を持っています。
やはりこれが経営判断に必要なスキルの一つであると感じました。
勿論「野生の勘」で乗り切る経営者も一部いますが、これはマネしようと思ってもできません。
しかし、論理的思考力は訓練で身に付けることができます。
人は見たいものを見たがります。その方が安心するためです。
でも安心感が得られても結果や改善が見えなければ何も物事は解決しません。
なので、見たいものを見る傾向がある生き物であることを前提として行動・判断する必要があるのではないでしょうか。